名無しさん感想3

ドキッ☆名無しさんだらけのクラナドSS大会


ちょっと寝ました。元気になりました。
今日はCグループから。時間があればA,Bの追加分まで。
メンバーを見る限りどうもCは死のグループ、最激戦区ってことになりそうです。いや、別にグループ内で出来を競うわけではありませんが。
んでは感想いきます。ネタバレ全開ちょっと辛口もあるよ、な感じですのでご注意くださいませー。


(27:15  Cグループ 夏のおもいでまで)






・鳥の歌


 文章は上手で、こなれた感じ。
 ところどころ抽象的なパラグラフを入れ込むことで読者をひきつける。書き慣れてますねー。見事。
 『蛍の灯火』と同じように、この話も一行一文の形となっています。蛍の感想にも書いたように、この形式だと普通話のリズム、速度の面でひっかかりが生じてきます。でも、この話にはあまりそういったものを感じませんでした。そういったところからもこの作者さんの確かな力量が見て取れます。
 と、いった感じで、文章的な面では特に言うことが見つかりません。
 話の内容の方を。
 芳野と美佐枝、同じ時代に同じ学校で過ごした二人。喧嘩仲間、という言葉が一番しっくりくる表現だと僕は捉えているのですが、今作はその二人が久しぶりに会った時の話。
 久しぶりに会った芳野は、夢ばかり追いかけていた芳野は、現実に、しっかりと目に見える形で『いっちょまえ』になっていた。美佐枝はそんな芳野に『私と不倫しない?』と問いかけます。多分、ほとんどの冗談にほんのちょっとの本気を込めて。普段に無い、少し幼く見える美佐枝は芳野も言うようにとても魅力的です。
 あー、すごくいい関係の二人だなぁ、と。この場合の「いい関係」っていうのは、男女における単純な恋愛関係という意味ではありません。友情とか信頼とか少しの恋慕とか、そういうのが交じり合った真に『いっちょまえ』な関係です。
 そんな二人の関係を、序盤からよく描けていると思います。実に素敵。
 でも、です。
 そこまでがすごく良かった分、ラストの唐突さ、あざとさ、安易な都合の良さにはちょっと落胆しちゃったというか。さすがにそのタイトルは当たらねぇだろうよ、っていう(笑)
 もうちょっといい終わらせ方はなかったものかな、と。この作者さんならそれができたと思うのですが、うーん、読者受けを狙われたのかなぁ。





・夏のおもいで


 冒頭でも書いたように、Cはやはり死のグループみたいです。この話もすんげえいい。
 所々に荒さを感じなくもないですが、基本この方も文章は上手で書きなれた感じ。
 この作品のどこがいいって、もちろん、読ませる地の文も素晴らしいんですが、やっぱりそれ以上に智代と有紀寧のやり取りが素敵過ぎ。
 またちょっと勝手に引用しちゃいますが


「宮沢。何だそれは」
「あ、これですか」両端を掴んで、プリントされた文字が見えるように上へと掲げる。「なんと――」
「お化け屋敷の無料券か」
「あー」表情に悪戯っぽさをはらんだ驚きが浮かぶ。「そこはわたしが言うところですよ」
「変に焦らそうとするからだ」
「情緒がないです」
「すまないな、そういう性格なんだ」


「なあ、宮沢」
「なんでしょうか」
「その、訊きたいことがあるんだが……変なことだと思うが、いいか?」
「エッチなことはだめですよ」
「違う。断じて違う」
 なんだ、違うんですか。と少し先を丸く尖らせた、つまらなそうな言葉が返ってくる。


「朋也さんと、何かあったんですか」
「いや、何もないんだ。何も」
「それは、何かあったんじゃないですか」


「私も、ないてみようか」
「お化けさん、蹴っちゃだめですよ」
「大丈夫だ」


 こういった掛け合いの軽妙さといったらもう。
 蝉に例えて話を進めていくのも良かったと思います。14文字の涙で同じようなのやったことのある僕なんで多少の贔屓目はあるでしょうが(笑)
 加えて。所々に出てくる、思わずはっとするような文章。
 また引用しちゃいますが


春から始まり、そして春を越えたこの関係の中で、春と一緒に、私たちは何を越えたのだろう。


ただ、やさしさにもいろいろある。撫でるようなやさしさもあれば、撥ねつけるようなやさしさもある。宮沢のやさしさには、きっとその両方が含まれている。


もしかしたら、本当は鳴きたくなんかなくて、だからずっと泣いているのかもしれない。


ないて、いるんじゃないのか。


木よりもうんとやさしい朋也の匂い。これで私も、しっかりとなくことができるはず。


助走距離は長くとった方がよく飛べるだろうか、それとも一気にいった方がいいだろうか。そんなことを考えながら、ゆっくりと、私たちは夏の思い出への扉をくぐっていった。



 うーん、少しだけ挙げるつもりが随分と数が多くなってしまいました。こういった「ちょっと普通じゃない文章」は大好物です。
 先に挙げた会話の件といい、僕の感性をもろに刺激してくれる話です。超愛してる。間違いなく今までで一番好きな話です。
 んで、褒めてばかりなのもあれなんで。
 話全体を漂うちょっと濃い目のあざとさ。
 先に挙げた文章も一つ転べば「わざとらしい」などと取られそうです。特に、蝉に関する描写はちょっとくどかった気がしないでもないです。まぁこの辺、かなり人の好み左右されるんで難しいところですが。今回も、「あざとさが気になる人もいるかもしれない」というレベルですので。少なくとも僕はそんなに気になりませんでしたね。まぁつまりちょっとは気になったということですが(笑)