たまにはちょっと真面目に考えてみる
昨日のweb拍手レスで触れた台詞後の地の文について。
仁也さんからも同じ指摘をただいたので、ちょっと真面目に考えてみます。
最近僕がああいう書き方することが多いのにも、一応理由はあったりするわけで。
例えばですね、
「そうか……かきの野郎、裏切りやがったか」
リンは顔をしかめて言った。
「ええ、処置の方、どうしましょうか」
翔は努めて冷静に言う。動揺を見せるわけにはいかなかった。特にこいつの前では。
「構わん、泳がせておけ」
室内に響くリンの声。
「これも……計算の内なのですか?」
ふん、余計なことを。翔はリンの顔を睨みつけたが、それ以上、リンは何も言わなかった。
こういう文章があったとします。
さて、どっちがどっちの台詞か分かりますか?
多分分からないんじゃないかなと思います。ええ、だって一応そういう文章を作ったつもりですから(笑)
まぁこれは例が非常に極端ですが、こういうことって、市販の本を読んでいても結構あったりしません? あれ、これはどっちの台詞だろう? ってこと。
少なくとも僕はあります。読解力が足りない、って言われたらそこまでですがー^^;
「〜〜」
……は言った。
……は言った。
「〜〜」
これ、どっちでも使えちゃうんですよね。
ま、台詞や地の文で書き分ければいいわけですが。
でも、もっと簡単な方法としてはですよ
「そうか……かきの野郎、裏切りやがったか」
「ええ、処置の方、どうしましょうか」リンは顔をしかめて言った。
「構わん、泳がせておけ」翔は努めて冷静に言う。
動揺を見せるわけにはいかなかった。特にこいつの前では。
「これも……計算の内なのですか?」室内に響くリンの声。
ふん、余計なことを。翔はリンの顔を睨みつけたが、それ以上、リンは何も言わなかった。
こうしちゃう。これでどっちがどっちの台詞かはっきりしました。
短い台詞が続く時なんかさらに有効。
「はい」
僕は頷いた。
「よし」
不二が言った。
「行きましょう」
「ええ」
目指すはアヴァロン。そこには全てがあるという。
これじゃどっちがどっちの台詞か絶対分かりませんよね。
「はい」僕は頷いた。
「よし」不二が言った。
「行きましょう」
「ええ」
目指すはアヴァロン。そこには全てがあるという。
これでどうでしょう?
さっきも言ったように、これらは基本的に各々の台詞やそれまでの流れ、地の文で書き分ければいいことなのです。書き分けるべきことなのです。
ですが、意図的に台詞以外の描写を減らしたい時もある。短い台詞を交互に言わせたい時もある。そういう時には効果的だと思うんです。そんでもって、読者にも非常に分かりやすい。
で、次は別の観点から。
「あの、先輩…………今……彼女、いらっしゃいますか?」
豊は顔を真っ赤にしながら言った。
まるでリンゴみたいだ。なんてありふれたことを茨木は思った。そんなことを考える自分は多分混乱しているのだろう。まだ冷静な部分で茨木はそう判断した。
「えーと……あのな……」
彼女の言葉の意味が分からないほど茨木は子供というわけではない。
何かを言わなければならない。それぐらいのことは茨木にも分かった。でも、何を言えばいいのかが分からなかった。
「だから……その…………お、俺は」
目の前の後輩と同じように、茨木の顔もまた赤く染まっていた。
しっかりしろ。茨木は小さく自分に言う。
茨木は決意する。豊が勇気を出した。じゃあ次は俺の番だ。
――しかし。
「あああっ」
突然、豊の声。
「ど、どうしたっ!」
「あの、先輩」豊は顔を真っ赤にしながら言った。「今……彼女、いらっしゃいますか?」
まるでリンゴみたいだ。なんてありふれたことを茨木は思った。そんなことを考える自分は多分混乱しているのだろう。まだ冷静な部分で茨木はそう判断した。
「えーと」茨木は言葉に詰まる。「あのな……」
彼女の言葉の意味が分からないほど茨木は子供というわけではない。
何かを言わなければならない。それぐらいのことは茨木にも分かった。でも、何を言えばいいのかが分からなかった。
「だから……その」目の前の後輩と同じく、赤く染まった顔で茨木は言葉を繋げる。「お、俺は」
しっかりしろ。茨木は小さく自分に言う。
茨木は決意する。豊が勇気を出した。じゃあ次は俺の番だ。
――しかし。
「あああっ」突然、豊の声。
「ど、どうしたっ!」
この二つの文章。内容は全く同じです。
でも、受ける感じは結構違うんじゃないかな、とか思ったりするのですがどうでしょう?
上は沈黙を表す「……」を結構使ってます。下は一箇所だけ。
まぁこれぐらいならまだマシな方だと思うのですが、もっと「……」が増えてくると、ちょっと見た目ちょっとよろしくない感じになってきます。何となくチープです。
下では台詞の間に地の文を挟むことによってその沈黙、間を作ってます。
じゃあそもそも「……」を使わんなきゃいいじゃないか。ええ、その通りです。「……」を使わずに間を表現するのは話を書く上で大切な技術です。
でも、それにも限界がある。少なくとも今の僕はそう。
それに。
現実での会話を考えた時。「……」って、かなり多いと思いません?
言葉に詰まらず全部すらすらと言葉が出てくる方が少ないんじゃないかなぁと。
あとこれは多分個々人の感覚的な問題だと思うのですが
「あの、先輩…………今……彼女、いらっしゃいますか?」
豊が顔を真っ赤にしながら言った。
とか
「あの、先輩」
豊は顔を真っ赤にしながら言った。
「今……彼女、いらっしゃいますか?」
よりも
「あの、先輩」豊は顔を真っ赤にしながら言った。「今……彼女、いらっしゃいますか?」
こっちの方がリアルっぽいよなぁ、なんて感じるんですよね。
とかなんとか色々な事情で最近は台詞の後地の文を続けてたんですが、でもそのために読みやすさが損なわれてしまってはもう駄目駄目な話。
もっと考えないとなぁ。悩み多きお年頃なのです。