名無しさん感想7

ドキッ☆名無しさんだらけのクラナドSS大会


他に感想を書かれてる方のとこ ⇒ Foolisさんイクミさん海老さん


さて、今日はラストC行きます。死のグループと僕が勝手に呼んでいるところです。
矛盾、真実、お料理大作戦、ある休日、二人きりの自転車紀行 いきます。
ネタバレ全開辛口もあるよ、なんでそういうの苦手な方はご注意くださいねー。


(23:20  矛盾、真実、お料理大作戦、ある休日、二人きりの自転車紀行 まで)







・矛盾


 はい来た。今回一番の問題作。
 センスびんびんです。切れ過ぎ。
 書き出し。掲示板の記事方式を上手く使ってきましたね。いきなり圧倒されます。
 2レス目、3レス目の終わり方も実に見事。なるほど、こういう使い方があったか。
 椋を応援する自分、朋也を奪い取りたいと思う自分。どっちも本音で、その矛盾に笑う杏。切ない。痛い。
 それって、多分誰にでもある一面なんですよね。色々な矛盾を抱えながら生きていく。だからこそ、杏の抱える矛盾が痛切に響いてきます。
 文章は実にこなれていて、かなりのセンスを感じます。また勝手に引用しちゃいますが


 まるで溺れる魚
 溺れると解っててもこうしてわざわざ自分で自分の首を絞めに行くあたし。
 今ならきっとパブロフの犬にだってなれる。


 なんだこれ。どうしてこんな言い回しができるんだ。
 そこでパブロフの犬を持ってきたのが憎過ぎる。普通思いつきませんって。



 「ああ、かわいそうなあたし」あたしの中で裂けた舌が嬉しそうに言った。「悲劇のヒロインのいっちょ上がりね」
 悲劇じゃないわよ。単なる自業自得っていうのよ、この場合。
「そう? それじゃあ、自業自得なヒロインのできあがりね」
 全くよ。悲しくて笑いしかこみ上げてこないわ。
「本当ね、涙なんて出てこないわね。屋上行ってこみ上げる笑いをどうにかしたい気分よ」
 初めて意見があったわね。
「そうね」
 そのまま授業をサボって、屋上に上がる。いやみなくらいに太陽が眩しくて、哀色の空は雲ひとつ無く澄み渡っていて可愛げがない。屋上には誰もいなくてちょうど良いやって、笑ってみた。そんな空の下で悲しくて笑ってる自分が滑稽極まりなかった。
 ひとしきり笑って、自分の立場を改めて見つめなおしてたら、虚しさが溢れて、また笑いが溢れた。だからまた笑った。空が青かったから、また笑った。
 曇り空が、恋しい。


 このテンポ、流れはちょっと真似できそうにありません。
 これはね、完璧過ぎる。多分この場面、作者さんも自信があると思うんですが、確かに絶賛するしかない。センス丸出し。

 全体的によくできてます。文章表現も達者です。
 ですが、作者さんのためにも改善できそうな点を挙げときます。
 まずはラストです。「もし、あたしに〜」のとこですが、ちょっとあれは唐突過ぎるかな、と。見事なラストには間違いないんですが、もう少し自然な流れで持ってきてほしかった。あの飛躍こそが矛盾を表現していると取ることもできそうですが、んー、やっぱりそれでも唐突感のせいでイマイチかなぁ。
 あとは、「嘘と本音」の記述がちとくどい気がします。多分そこが一番のテーマでしょうから意図的に入れ込んできたんでしょう。はっきりと触れてるのは三箇所かな? 尺を考えると、頻繁に出て来過ぎかなぁ、と。
 僕が気になったのはそれぐらいで、あとは本当に凄いできでした。ありがとうございます。







・真実


 重いなぁ。
 でも確かにあり得る話ですよね。着眼点が見事です。
 芳野と朋也の関係もすごくいい。後半、朋也が芳野を飲みに誘うとこなんか素敵。
 文章はちょっとぎこちないかな、と。特に会話文が硬い感じ。
 多分この作品、そんなに時間かけないで書かれたんじゃないかと思うんですが、全体的に荒い印象が。もうちょっと洗練できたんじゃないかなぁと。
 終わり方ももっと何かあったんじゃないかと思います。何となく無理矢理終わらせた感じがしちゃって。






・お料理大作戦


 杏先生万歳。
 題名の通り大部分が料理の話で、勉強になりました(笑)
 話としては、特に目新しいものは無かったものの、お約束をきっちりと押さえていた感じ。
 大まかな筋はすごく自然で、全く問題ないと思いますので、後はそれこそ「料理」の仕方ですね。
 文章はまだそんなに書き慣れてないのでしょう。ぎこちなさがちらほらと。
 台詞に頼ってるところが大きいので、もっと地の文を増やすことを心がけるといいと思います。





・ある休日


 ご主人様キタコレ。
 作者さんは欲望に忠実な人だと思います。これは間違いない(笑)
 風子可愛いです。でも同じぐらい暴走公子さんも素敵です。
 話は起承転結と上手くできていて、恐らく書き慣れた方の手によるものだと思います。
 でも、文章からは、ちょっと地に足が付いてない印象を受けました。本来もっと書ける方だと思うのですが。
 メイド姿の公子見てえ。






・〜二人きりの自転車紀行〜


 杏と春原のサイクリング話。
 普通にカップルしてる二人が羨ましいです。ちょっと春原、僕とポジション変わらんかね。
 特に事件があるわけでもないけれど、爽やかで、読んでいて心地いいです。
 文章は割と特徴的ですね。書き慣れた方だと思いますが、たまにおかしな文があったかなぁ。基本的に一文が長いので、特に注意が必要だと思います。
 気になったところ。
 ちょっとだれたかなぁ、と。もうちょい、内容にも文章にも波があった方がいいと思います。
 あとは、やっぱり杏と春原のカップリングに対する違和感が。
 多分、作者さんの中ではこれが当たり前で、全く問題無いのでしょう。自サイトで書く時にも、読者さんは分かってくれてるでしょうから問題ありません。ですが、こういう普段と違う場では、しっかりと二人のバックグラウンドを書いておくべきだったんじゃないかなぁ、と。いきなり杏と春原が恋人同士だったら、ほとんどの方は戸惑ってしまうと思います。