ばとこん感想8〜12


 ネタバレ上等辛いのもあるよなんてそういうのダメな方はご注意を。
 25:00  12 海の光





 8 眠りによって全てが。


 濃いなぁ。文章も、中身も。
 前半のやたらと硬い文体は、後半、少女の部分を際立たせるためのものでしょうか。恐らくは狙ったものだと思います。
 言ってしまえば「読みにくい」文を追って来たことで、最後、少女故の比較的柔らかな文章が切に響く。それまでの全てのエピソードは少女に収束してますし、これ作者さんはきっちり計算されてるんだろうなぁ。
 正直、ラスト以外の部分は、そんなに胸に来なかったんです。確かに文章は上手いんだろうけど、如何せん僕には硬過ぎて響いて来なかった。全然遠い世界、それこそ「紙の上」の世界のことにしか思えなくて、割と冷めた目で眺めてました。
 それが、ラスト、少女の話になると一気に引き込まれてしまって。すごく痛かった。アリスを演じるとか如何にも使い古された表現なんだけど、もうぐわーっと来た。……語彙が貧困であほの子みたいだ(笑)
 この話、戦争の悲惨さとかそれに関わる人間のドラマとかを書いてるようで、実は全て(文体にしても内容にしても)少女のために用意されたものであるような気がします。ぶっちゃけ、ラスト除いて後全部修飾に過ぎないと思う。めちゃめちゃ手の込んだ修飾ですが。悲劇の中にいる少女を効果的に魅せるためってことで、他の部分は作られたんじゃないかな。そんなこと言っちゃうと物語中の登場人物たちに失礼でしょうが。
 作者さんの意図とは違った読み方をしているのかもしれませんが、僕にはそう感じられました。感じられたんだからしょうがないんですよぅ。もし間違ってても怒らないでくれると嬉しいです……
 眠りによって全てが。始まるのか、終わるのか。救われるのか。堕ちるのか。これもいいタイトルだなぁ。
 難点……というわけでもないんでしょうが、もうちょっと読者側に寄って来てもいいんじゃないかなぁとか思ったり。今の状態だと少し距離が開き過ぎているような気が。


 作者さんどなただろう? 名無しさんだよもんさんじゃないかなぁとか一瞬思ったんだけど。







 9 天使みたいに、君は立っていた


 王道、といえるのかな。男の子が女の子のためにがんばる。でも大事なところで女の子ががんばる。
 きっちり綺麗に展開して、きっちり綺麗にまとめてきたなぁという感じ。
 ただ、なんだろう。所々に、わざとらしさというかあざとさというか、そういうのを感じてしまいました。特に台詞なんかがどうにも。すれてんだろうなぁ。
 テーマは分かるんです。戦争の悲惨さと二人の切ない境遇を、努力の末の報われない結末で描く。それに足るだけのストーリーもきちんと用意されてますし、ドラマも用意されている。
 ただ、どうしても「劇」を眺めている気分で。素直じゃない僕にも責任はあるんでしょうが、それだけでもないんじゃないかと思います。
 あとね。 
 『ごめんなさいっ、リク……おしっこ!』に作者さんの魂を感じました。


 まてつやさんかな、これは。







 10 やぎょういちにん、よるをあるく


 ふわふわとして掴みどころの無い話でした。掴ませないように書かれたのかな、とも思います。
 文章は割と好みで読んでいくのは楽しかったんですが、内容は……と考えると、そんなに楽しめなかったかなぁというのが正直な感想です。
 こういう、意味があるような無いような浮かんでいるような漂っているような話、基本的に好きなんです。じゃあどうしてこの作品を同じように楽しめなかったかというと、多分、話が全部一人の中で片付いちゃってるからだと思う。
 タイトル通り、一人で始まって、一人で終わって、他の干渉は一切無くて。そういう話はそういう話で有りだと分かってはいるんですが、あまり好きになれないんです。一般的にも好まれない傾向にあるんじゃないかなぁ、なんて勝手に思ってみたり。
 打って響いてが存在しない話って、面白くするの相当難しいと思います。波の無い海を見ててもなかなか面白くは感じられませんから。
 それに挑戦されたのかなぁとかまた勝手に想像してみたりもしますが、少なくとも僕はあまり楽しめなかったということで。ごめんなさい。


 大谷さんがblikcatさんっぽいとおっしゃっるのを聞いて、かなり納得しました。確かにこのふわふわ感はblikcatさんっぽいです。






 11 ユメミルセカイ


 ごめんなさい、原作未プレイのためするーの方向で。








 12 海の光


 これ好きだぁ。すっごい好きだぁ。
 ぶっちゃけ、完成度はそう高くないと思います。中盤の展開は急でちょっとついていくのに苦労しますし、フランス外人部隊もあまりにいきなりですし(伏線は用意されていましたが)、最後は無理矢理ですし。そもそもの設定にもちと無理なとこがあるような気がしないでもない。文章の精度にも疑問が残ります。欠点は結構見つかると思う。
 でも、そういうのが全部ぶっ飛んじゃうぐらいに、面白かった。楽しかった。
 主人公がかっこよくて強くて、まぁいわゆるU-1的なところがありますが、だからどうしたそもそも僕はU-1もの結構好きだ(笑)
 やっぱり誰にもヒーロー願望ってあって、この作品は僕のそれを気持ちよく満たしてくれました。現実の範囲内で。割とギリギリですが(笑)
 主人公と聡子の関係も大好き。いいなぁ、姉っていいなぁ(ちょっと違う
 作品を比べるのってあんまり良くないことなんでしょうが、それを承知で作者さんにごめんなさいして書かせていただきます。
 『ユア グレイブ〜』では欠点がどうにも目について楽しめなかったとか言ってた僕が、今作ではそれをぶっ飛ばして楽しんだ、とか今度はそんなことぬかしてます。でも結局、そういうものなんだと思う。面白かったものは面白かった。身も蓋も無い言い方ですが。
 ただ、きっちり細部まで手をやって欲しかったという気持ちはあります。今でさえこれだけ面白い話ですから、もっと煮詰めて書かれたらどれだけのものになるのか、それを想像するだけで何か楽しい。まぁ多分時間無かったんでしょうけど……


 "1"を読み終える前に大谷さんだと思った。でもそうだとしたらこれで三回連続の高評価になっちゃうわけですごく悔しい。