バトこん感想16〜18
あ、昨日触れた『15 私の感謝する方法』は、多分、作者はっしーさんですね、うん。僕は分かってしまったのだよ。
16 メリッサ
この作品を触れるに当たってまず第一に挙げておきたいのは、構成の上手さ、ですね。
タイトルを挟んだ後、割と長いこと世界観、設定についての文章が続きます。話の最初でそういった説明をしてしまう。非現代ものの作品によく見られることですが、正直、これってどうかなぁと思うんです。少なくとも僕はあまり好きではありません。
端的に言って、そういう文章って面白くない。話に入っていく上で非常に大切な頭の部分でその「面白くない」ことをやられると、どうしても最初の一歩でつまずいちゃいます。
もちろん、早い段階で物語の背景を伝えておくのは必要なことでしょう。でも、やり方は工夫するべきだと思う。短くすますとか、分散させるとか、描写やら台詞の中に紛れ込ませるとか。いきなり、どん、と長々とした設定語りを置くのではなくて。もしもそうやって置くのなら、読んでいて面白い状況説明文である必要があると思う。それってかなり厳しい。
短編で非現代ものをやる難しさっていうのは、そういうとこにもあると思います。どうしても背景の説明が必要になってくる。長編であれば話の序盤で小出しにしていくとかそんなこともできるんでしょうが、短編でそれやるとすぐ終わっちゃいますからね。
例えば今回でいうと、『6 Metropolis Lilith』なんかはその辺の感覚に優れた作品であったと思います。らしい説明を一切省いて、台詞や自然な描写の中で自然と背景を理解させる。素敵です。まだ触れていませんが、『20 はらぺこ戦車隊、北へ』も同じように世界の説明をぶち抜いちゃってますが、でもそれで成功してると思う。もう何ていうか、おらおらついて来いお前らみたいな勢いがある。
さて、というわけで随分と話がそれてしまいましたが、今作『メリッサ』です。初めにも書きましたが、これは構成の部分で成功していると思います。
初めて読んでいった時、タイトル後の長い説明部分で、正直な話、一歩引いてしまいました。いや、二歩ぐらい引いちゃってたかもしれない。上に長々ぐだぐだと書いたまんまの理由です。
でも、それが最後にブーメランでした。戻ってきました。
この作りには唸らされました。非現代ものを書く時に大きなネックとなる世界観の説明。それを逆に利用しちゃった構成。これはいいなぁ。
内容について。
何とも後味の悪い話です。でも決してマイナス評価に繋がる後味の悪さではない。物理的なすれ違いで心理的なすれ違いを表現したのも見事だと思いました。ブーメランなラスト一文といい、文句の無い終末です。
主人公の潔癖過ぎる性格にイライラしちゃったりもしますが、それ故の「斬首公」でしょうし、納得できなくはない。
不満を挙げるとすれば、二人の同居生活のところでしょうか。残った3kb強を目いっぱいここにつぎ込んで欲しかった。もっとその部分の主人公に感情移入させて欲しかった。幸せが大きければ大きい程、それが消えた時の衝撃、悲しみも大きくなるでしょうから。
タイトル『メリッサ』 僕がこの話で一番評価したいのは、もしかするとここかもしれません。
メリッサ。蜜をつける花。虫が寄ってきてその蜜を吸い、花はその虫たちを受粉のために利用する。
加えて、メリッサの葉が持つ、薬としての側面。万能薬とまで言われたそうですね。その名を持つヒロインに救われることのできなかった主人公。皮肉効き過ぎです。
あとはポルノの曲、メリッサも意識されてたのではないでしょうか。これ歌詞痛いよ。
何せ、
君の手で切り裂いて
ですからね。他の部分もかなり迫ってくるところがあります。直リンクうんぬんとかありそうなんで、 ぐぐる先生の検索結果置いときますね。
どこまで作者さんの意図なのかはわかりませんが、いやしかし凄いタイトルです。
これもまた作者さんの予想つかないんだよぅ。
17 笑わない彼女とロリータ=ポップコーン
開始三行、『メイドさんのロリータ』でえええええええってなりました。いやね、もちろん名前だということは分かっていたんですが、うん、掴みはばっちりです。ばっちり掴まれました。
ノリのいい文章。楽しいです。バッキンガム。バッキンガム。
頭のアーティスト羅列。何か意味があったように見せかけて実は何も無い気がします(笑) 読者をちょっと突き放す展開ではあったかもしれません。僕は置いてかれちゃいました。洋楽あんまり聴かないんですよぅ……。
その部分を除けば、文章のお陰でただ読んでるだけでも楽しい話でしたし、内容の方もなかなかに楽しむことができました。
特に最後の『どうしてあの男達は〜』は最高でした。多分、これやるために書かれた話なのでしょう。ばっちりやられました。おい起きろ、襲撃だ!
気になったのは、タイトルにもなっているバトルメイドロリータさん。キャラがイマイチ掴めませんでした。これは作者さん狙ってそうされたのかもしれませんが。
というわけで、特に文句をつけられそうなところがありません。よくできたエンターテイメント小説であったと思います。
Revinさん候補その2(笑)
冒頭でアーティストを並べてついて来れるならついて来い的なとこがRevinさんっぽいような。あとちょっと理不尽で衝撃的な謎解き(笑)も。ロリータ=ポップコーンっていう意味のありそうで無さそうでよく分かんない名前も氏っぽい。初潮が〜のくだりも氏っぽい。つか、こんなこと平気で書けるのRevinさんか竹仙人さんぐらいだと思う。
うん、やっぱこれRevinさんだ。
18 十軒長屋の仏舎利の話
長屋の様子がめちゃめちゃ綿密に描写されていて、文字を追っていると、ヴァーチャルな世界で当時を目の当たりにしているような感覚がありました。
こういう言い方は本来するべきではないのでしょうが、あえて作中の表現を使わせていただくなら、「貧困の底辺」にある人たちの物語。些細なきっかけから全体に狂気が伝わっていく様子が巧妙に描かれていました。
そんな内容とは裏腹に、筆の方は割と静かな感じ。『眠りによって〜』をスコッチのストレートとするなら、この『十軒長屋〜』は芋焼酎水割りになりましょうか。こちらの方がするすると入ってきます。とはいえ、どちらも最初は敬遠され気味なのかもしれません。
貧困と人の狂気。それらによりお釈迦様に「させられた」本来ならば人間として生きるはずであった赤ん坊。特に最後ですよね。この話の肝は。
全体を通して、上質な物語であったと思います。
ただ……これはもう単なる嗜好の問題になっちゃいますが、読んでいて、僕にはあまり面白く感じられなかったんです。評価すべき点は数えきれない程あるにも関わらず、このお話を楽しむことができなかった。ですから、やっぱりこれは個人的な好みの問題なんだろうなぁと思います。作者さん、ごめんなさいです。
作者さんの予想はつきません。うーん。