エヴァこん感想

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 割と辛口気味でしかもネタバレに関しても全く考慮していませんので、そういうの見たくない方はスルーしちゃってください。
 書き手さんの糧になるような感想を目指しているのですが、うーん、どれだけ上手くいっていることやら。



区分 票数/総評数 割合
1点 0/18 0.00%
2点 3/18 16.67%
3点 3/18 16.67%
4点 3/18 16.67%
5点 2/18 11.11%
6点 2/18 11.11%
7点 3/18 16.67%
8点 1/18 5.56%
9点 1/18 5.56%
10点 0/18 0.00%
採点なし 1/19 5.26%
採点数 18/19 94.74%


 全体としてはこんな感じ。
 平均4.83点。まぁそんなもんだよねーってところ。
 んでは、以下個別感想を。点数はまだ秘密。






1 『残酷な天使のテーゼ


 音楽でエヴァを表現しよう、ということでしょうか。
 文章自体はしっかりしていますし、ストーリーもきちんと考えられているんだと思います。
 ただ、奇をてらったのでしょうか、文語体で書かれた地の文は、正直マイナスにしか働いていないと思います。
 少なくない読者がそこで読む気力をなくしたでしょうし、カタカナ語が多く出てくる今作に文語体をあてるのは明らかなミスマッチかと。
 内容に関して言えば、そもそも今企画のテーマに合致していないのが痛いです。アスカ、レイのどちらかが中心にいなきゃいけないはずなので。そこでも減点せざるを得ません。
 あとは、恐らくこの物語において一番重要なシーンであるはずの、シンジがカヲルを説得する場面。ここがちとあまりに簡単過ぎた気がします。もっと尺を割くべきだったのでは、と。
 最後、カヲルが遺書を切り裂くのも、あまりにベタ過ぎて醒めてしまう感が。
 基本的な力はある方だと思うので、今度(があるかどうかはまだ分かりませんが)は気をてらわない作者さんそのままの作品が読みたいなぁなんて思いました。
 辛口な感想となってしまいましたが、ご容赦いただければ。









2 雨の後には虹も出る


 すごくストレートな二次創作という印象。まず何よりアスカが可愛かったです。
 いいなぁ、アスカもリツコもすごくいい人で、何だか心が癒されます。
 間違いなく今後のアスカを隠喩しているであろう爽やかなラストも、読者からしてとても気持ちいいものになっていると思います。
 以下、気になったところを。
 文章は割とよく書けてると思うのですが、ところどころ荒い感じが。あまり書き慣れてない方なのかな? 場面転換がちょっと分かり辛かったです。シーンが変わる時には改行を多めに取るとか間に記号を入れるとかの工夫が欲しかったです。
 あと、全体的にちょっと薄味過ぎた気がします。24kb使った割には、中身という程の中身がなかったかな、と。日常もの、というとそれでもいいのかもしれませんが、やはり相対評価されることを考えるとこれだけではきついかと思います。
 今企画のテーマである音楽についても、無理矢理入れ込んだ感じがぷんぷんしてきちゃいますです。
 辛口なことばかり書いてしまいましたが、許していただければ幸いです。









3 Going where the cold wind blows


 あそこで五千百度の炎を持ってくるそのセンスに嫉妬。
 綾波はきっと笑ったんでしょうね。でも人類は滅びなかったわけで、だとすると、彼女は決して不幸ではなかったんだと信じたいと思います。
 全体的にセンス剥き出しで、何ていうか、文章を追ってるだけで楽しかったです。
 ただ、ちと全体的に説明的過ぎた気はしないでもないです。まぁ過去を振り返ってる話だからそうなっちゃうのは仕方無いのかもしれませんが。
 あとは、まぁ言っちゃうと「Don't Think. Feel !」な話だと思うので、こういう場であまり上に行きそうではないかなぁ。








4 復讐ハーモニカVS BGエル


 何この不思議ワールド。こっちまで浸食されそうな摩訶不思議空間。
 こういう話を考えつくのがまず凄いし、「ハチャトウリャン」とか「エントリープラグの中に反響する互いの音楽性の違い」とか言葉のセンスももの凄いです。
 全体を通じて独特な文章は、これを味と感じられるかどうかで評価がまっぷたつに分かれそうな気がします。
 んで、ごめんなさい、僕には合わなかったです。メタな表現なんかがどうにも引っかかって。そういうのが好きな人は好きなんだろうと思いますが。
 中盤以降、ちょっと走り過ぎた気がします。そのせいか、説明に終始してしまってる印象がありました。








5 カゼニナル


 これは上手いなぁ。
 特にテーマの使い方はちょっと素敵過ぎます。これは素直に嫉妬するしかない。
 歌が風になる。いいなぁこれ。今度使わせてもらいます(笑
 25kb制限でよくこれだけ詰め込めたなぁと感心。起承転結としっかり組み込まれた話でした。
 文章も基本的に上手だと思うんですが、ただ、ちと荒い印象を受けましたし、たまにおかしな文もあったり。推敲重ねる時間が無かったのかなぁとか勝手に予想してみます。
 あとは、やっぱりラストかな。最後のページは無かった方が良かったと思います。少なくとも僕はそっちが好き。
 幸せな結末にしたい、という作者さんの意図は分かるんですが、ちと予定調和過ぎた気がします。あそこは明確に書かずに、暗に幸せな結末を示す、ぐらいに抑えておくべきだったのではないかなぁ、と。
 これは間違いなく上に来そう。









6 奏


 かなりこなれた作品だと思います。文章にしても、展開にしても。
 話の出来からするともっと高い点数をつけるべき作品だとは思うのですが、でもごめんなさい、僕の好みからは外れるので、この点数で。
 喧嘩の後引っ越しまでされてさらには「迷惑」とまで言われて、それでも連絡を取ろうとするシンジはまぁ客観的に見てストーカー以外の何者でもありませんし、そこまでやっておいて「やっぱり好き」だというアスカにもイマイチ納得がいきませんでした。
 それらを信用とか信頼とか愛とかの言葉で片付けてしまうのは簡単なことでしょうが、うーん、やっぱり納得がいかないです……。引っ越しって、一時の感情、勢いだけでできるものじゃないと思うんです。手続きとか色々あるわけですし。
 「下らない優越感」ぐらいなら、作業の途中で勢いも醒めちゃうんじゃないかなぁと。引っ越しの作業中には間違いなくシンジとの思い出の品なんかを改めて手に取ることもあったでしょうし。僕としてはむしろそこでオルゴールを出してきて欲しかった、なんて思ってもみたり。
 初めから結末ありきで都合よく話が進んでいるような気がしてしまい、どうも素直に楽しむことができませんでした。ごめんなさい。







7 音楽の瞳


 文章はしっかりしていて、上手な方だと思います。
 でも、うーん……ごめんなさい、あまり楽しめなかったです。
 「日本刀の扱いに長けた人間に特有の傷」に何故か詳しい主人公だったので、実は彼ものすごく強くて、クライマックスでは殺人狂のアスカと対決するんだろうなぁなんて思ってました。全然違いました(笑
 音が見えるというのはかなり素敵なアイデアだったと思うのですが、今作でそれを生かせていたかというとちょっと疑問が残ります。別に「音楽の瞳」じゃなくても話は成り立ったと思うので。「匂いの耳」とか「味の鼻」とかだとちょっとカッコ悪いですけど(笑









8 The Song for the Jailbird


 悲しいけど、あるいは悲しいからこそ、とても奇麗な話でした。
 ただ、尺のほとんどを状況・設定の説明で使ってて、物語としてはちと味気ないと言わざるを得ません。
 ラスト、二人が歌うところがこの話におけるクライマックスで、そこで詩的な文章を使うことによって直に感情を表現しようとしているのだと思います。が、フリが決定的に足りていない気がします。
 それまでがほとんど回想形式の設定語りであったために、読者の気持ちが高まりきれないんじゃないかなぁ、と。
 文章は上手ですし、言葉の選び方も奇麗で、悲しくて切ない設定作りも見事です。
 でも、物語、小説としての作りの甘さが、それらの長所を潰してしまっているような気がしますです。









9 月の光に照らされて


 あったかい話でした。シンジもアスカもミサトも優しくて、読んでて幸せな気持ちになれました。
 アスカが不眠症ってのは確かにありそうですよね。それを二人で治していくってのがとても素敵。
 何ていうか、難しいこと考えないで、「ああ良かったなぁ」と思えるお話でした。
 とはいっても、せっかくのコンペ、それだけで感想を終えるのもあれですので、以下気になったところを挙げておきます。
 第一に、アスカが悪夢を乗り越えるというこの話において一番重要な部分が、あまりにもあっさりとしていること。
 あとはそれに関連してくるんですが、作中で何度も出てくる「月の光(月光)」や、前半のアスカの台詞にある『アタシは音楽が好きなんだ』といった明らかに重要っぽい構成要素が、イマイチ生かされていなかったかな、と思いました。
 「全ての音は子守歌」というのはとても素敵なフレーズだと思いますが、前述の通りその場面の描写がちと少なめなので、割と唐突な表現に思えてしまいます。それこそもっと「月光」や「音楽が好き」という要素を前面に出して、深く描写していくべきだったのではないかなぁ、なんて。








10 いつかの子守歌


 優しくて幸せなお話。かなり好きな作品です。僕の目指してる一つの方向(優しさに涙が出ちゃうお話)に近くて。
 シンジ、アスカ、ミサト、みんなが優しくて読んでて幸せーな気分になれました。
 文章結構こなれた感じなんですが、でも、うーん、もうちょっと洗練できるんじゃないかと思ったり。ところどころにひっかかる文章が。
 あと、物語の演出の仕方。基本的にこれもこなれてると思うのですが、正直、ちとやり過ぎな感じがなくもないです。まぁこれは好みの問題かもしれませんが。
 もう一つ、今作のおけるミサトの扱いについて。ぶっちゃけ彼女いらない気がします。出てくるのあの場面だけで、以降に影響を及ぼしているようにも思えませんし。シンジとアスカ二人のみに絞った方がよりまとまったんじゃないかなぁと。
 何か大分辛口な感想になってしまいましたが、好みだからこその辛口だと捉えていただきたく。